子供の嘔吐・下痢
嘔吐も下痢も、基本的にはウイルスなどの病原体を排出させるための防御機能の1つです。なぜそれらの症状が引き起こされたのか、他の症状は現れていないかということに注目しながら、適切に診断・治療していきます。
嘔吐・下痢の受診のタイミング(※こんな場合は受診してください)
- 飲み物を飲むとすぐに吐く
- ずっと元気がない、機嫌が悪い
- 小さなお子様が涙の出ない泣き方をしている
- 皮膚、口の粘膜、唇に乾燥やその他の異常が見られる
- 尿が出ない
- 頭痛がある
- 1日に何度も嘔吐する、下痢をする
- 生後3カ月未満のお子様で38度以上の発熱がある
- 生後3カ月以上のお子様で39度以上の発熱がある
以上のような状態・症状が見られる場合には、医師による診断・治療が必要になることが多くなります。お早目にご相談ください。
症状が軽い下痢・嘔吐のみでご自宅で様子を見られる場合にも、脱水症状に気をつけてください。小まめに水分を摂取しましょう。
嘔吐・下痢が出る原因は?
お子様の嘔吐・下痢の約8~9割は、ウイルス感染を原因としています。あとの残りは、細菌感染やアレルギー、または食べ物をうまく消化できなかったことなどが原因になっています。
嘔吐・下痢の原因疾患としてもっともよく見られるのはウイルス性胃腸炎ですが、腸重積、髄膜炎などを原因とするケースも存在します。
考えられる嘔吐・下痢の主な病気は?
嘔吐・下痢の原因となる病気には、以下のようなものがあります。
ウイルス性胃腸炎
急な吐き気・嘔吐、下痢を伴います。
その名の通り、ウイルス感染を原因として胃腸に炎症を起こす病気です。
ロタウイルスとノロウイルスの違い
ロタウイルスとノロウイルス、最近はよく耳にするウイルスですが、どちらもウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスです。
※スクロールで全体を表示します。
ロタウイルス | ノロウイルス | |
---|---|---|
感染から症状が 現れるまでの期間 |
1~3日 | 1~2日 |
流行しやすい季節 | 冬から春にかけて | 秋から冬にかけて |
罹患しやすい年齢 | 乳幼児 | すべての年齢層 |
嘔吐の有無 | ある | ある |
下痢の有無 | ある(長引きやすい) | ある |
発熱の有無 | ある | 必ずしもあるとは限らない |
脱水症状のリスク | 高い | やや高い |
重症化のリスク | 高い | やや高い |
検査の保険適用 | すべての年齢層において保険適用 | 3歳未満または65歳以上が保険適用 |
ワクチン | ある(生後14週6日までに開始) | なし |
治療薬 | なし | なし |
ロタウイルス
乳幼児に感染しやすいウイルスで、5歳までに誰もが一度は感染すると言われています。
感染すると、1~3日の潜伏期間を経て、下痢、嘔吐、発熱などの症状を引き起こします。特に1~2歳で感染した場合には、症状が長引きやすいと言われています。
ワクチンの普及により、発症者数は減少傾向にあります。
ノロウイルス
非常に感染力の強いウイルスで、免疫がしっかり機能する大人でも感染します。
感染後、1~2日の潜伏期間を経て、下痢、嘔吐などの症状を伴います。また、発熱が見られることもあります。抵抗力を持っている人も少なくないため、軽症で済むケースがやや多くなります。
アデノウイルス
アデノウイルスもウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスです。
症状としては、嘔吐、下痢、発熱、結膜炎などが挙げられます。また、肺炎や脳炎を合併すると、ときに命にかかわる状態に陥ります。
梅雨時から夏にかけて流行するプール熱の原因となるウイルスです。
腸重積
嘔吐・下痢を伴う病気として、可能性は低いものの、腸重積(症)も考慮する必要があります。
10~30分おきに、冷や汗が出たり、お腹を押さえて身体を丸めるほど強い腹痛に襲われ、ときに嘔吐・下痢を伴います。悪化すると腸閉塞を起こすこともありますので、早急に受診する必要があります。
髄膜炎
腸重積と同様、可能性は低いものの、髄膜炎も嘔吐・下痢を引き起こすことがあります。
髄膜炎は、ウイルス・細菌が脳へと入り込む病気です。軽症で自然に治ることも少なくありませんが、ひどいときには嘔吐や下痢、発熱、強い頭痛を伴い、ときに命を脅かします。
子供はこんな時でも嘔吐します
咳こんで嘔吐
連続した咳によって吐き気をもよおし、実際に吐いてしまうことがあります。あるいは単純に、咳の勢いで胃の中のものを吐いてしまうこともあります。
特に小さなお子様は、吐いたものが喉に詰まらないように注意してください。
頭を打って嘔吐
頭を打って脳震盪を起こすと、その症状の1つとして嘔吐することがあります。脳震盪そのものは、しばらく安静にしていれば自然に治まりますが、脳内出血などを起こしている可能性もあります。頭を強く打った場合は、その後24時間以内、以下の点に注意してください。1つでも該当した場合には、救急外来の受診、もしくは脳外科のある病院に電話をしてください。一刻も早く、頭部CT検査、治療を受ける必要があります。
- 意識を失った
- 皮膚をつねるなどしても反応がない
- けいれん
- 手足の痺れ、手足が動かない
赤ちゃんの嘔吐について
赤ちゃんが吐くことは、珍しいことではありません。ただその後の判断や対処を誤ってしまうと、脱水症状に陥ったり、病気の発見が遅れたりといったことも起こり得ます。
生後6ヶ月未満の嘔吐について
機嫌が悪い状態が続いたり、発熱などの他の症状が現れている場合には、かかりつけの小児科を受診しましょう。確率としては高くないものの、ウイルス性胃腸炎などにかかっている可能性があります。また、特に顔色の悪さは、繰り返しの嘔吐とあわせて髄膜炎の初期症状であるケースも見られます。こちらの場合には、夜間でも早急に小児科医の診察を受けるようにしましょう。
生後6ヶ月以上の嘔吐について
夜間にウイルス性胃腸炎のような症状が現れたときにも、適切に対処すれば、翌日の午前中に受診しても問題ありません。脱水症状が一番危険ですので、嘔吐後30分が経過するごとにスポーツドリンクなどを少しずつ飲ませてあげましょう。すやすやと眠るようでしたら、そのまま寝かせてあげて構いません。繰り返しになりますが、翌日には必ず午前中のうちにかかりつけの小児科を受診するようにしてください。
嘔吐に発熱と下痢が伴う場合の注意点
嘔吐、下痢、発熱はウイルス性胃腸炎の代表的な症状です。ただ、これらの症状が必ずセットで現れるとは限りません。
1日以上の時間差を置いて2つ目、3つ目と症状が続くこともよくあります。 おしっこの回数・量が少ないとき、ぐったりして元気のないとき、半日以上嘔吐を繰り返しているとき、激しい下痢があるときには、点滴が必要になります。
それ以外のケースでは、吐き気を抑える座薬による治療で対応できることがほとんどです。
子供の嘔吐処理について
吐いてしまったものを処理する際には、その処理した人にウイルス・細菌が感染するリスクがあります。 時間を置かずに、素早く、できれば手袋やマスクをして処理しましょう。またその後、吐しゃ物が付着したところを、やや広範囲に塩素系漂白洗剤で消毒し、家族全員で手洗い・うがいを徹底しましょう。
子供の嘔吐・下痢Q&A
嘔吐・下痢の場合、いつから保育園・幼稚園、学校に行っていいのでしょうか?
嘔吐が消失して、水分および食事が摂れるようになるまで自宅で様子をみて頂くのがよろしいでしょう。また下痢がある場合は、ウイルスや細菌がまだ便中に存在していることが多いので、固形便が出るまでは、登園は控えましょう。
便の色が白っぽいのですがすぐに受診した方がいいでしょうか?
白色便を認める場合、乳幼児であれば、感染性胃腸炎の一つであるロタウイルスが原因であることが多いです。嘔吐がなく、水分・食事が摂れていれば受診をあわてる必要はありません。
新生児の白色便の場合、胆道閉鎖症という病気のことがあります。この病気は、肝臓と⼗⼆指腸をつなぐ胆管という管が生まれつき、または生後まもなく塞がってしまい、肝臓から腸へ胆汁を出せない難治性の病気です。遅くとも⽣後60 ⽇までに手術を行わないと、肝硬変へと進行してしまいます。
ウイルス性の胃腸炎なのですが、水やお茶を飲ませても吐いてしまうのですが、大丈夫でしょうか?
吐いた直後に無理に飲ませるのはよくありません。少し時間をおいて、少量の水分から与えましょう。具体的な目安としては、嘔吐から30分ほどおいて、50ml以内の水分から開始してみてください。それで嘔吐を認めなければ、徐々に水分量を増加させていきましょう。母乳は与えてもらってもかまいません。
下痢や嘔吐が続いた場合、脱水症が怖いのですが、点滴を打つことは可能なのでしょうか?
お子さんが頻回に嘔吐する場合は、辛そうにしていますし、保護者の方が脱水症を心配して点滴を希望されることは多いです。しかし、すべてのお子さんが脱水に陷っているかというとそうでもない場合が多いです。診察・問診で脱水症の程度を見極めてから点滴の必要性について判断することになります。
下痢の間はどのようなものを食べさせる方がいいのでしょうか?
少量でよいので消化がよい固形物を1日3回程度与え、小腸をある程度動かしてあげる方が早く回復します。具体的には、おかゆ,うどん,煮付け(白身魚・野菜)などです。